第6話 『楽しみながらファンをつくる方法』
皆さんこんにちは。
今回は、お客様があなたの会社のサービスや商品のファンになっていただき、他のお客様をも連れてきていただける、いわば「お客様がお客様を呼ぶ」営業のやり方について事例を交えてお伝えします。
■お客様分類
お客様と一口にいっても様々に分類されますよね。年齢・性別・所得・嗜好・居住エリアなどなど。あなたや会社との結び付きのレベルでお客様を分類してみると、次の5段階があるのではないかと考えます。
(1)潜在的なお客様
...あなたの会社の商品やサービスを未だ知らない方々。
(2)見込みのお客様
...あなたの会社の商品やサービスを知っていていつかは、利用いただく可能性がある方々。
(3)新規のお客様
...はじめて利用いただいたお客様。
(4)お得意様
...継続購入いただくお客様。
(5)ファン化したお客様
...ご自身が継続購入することは勿論、他のお客様を連れてきていただけるありがたいお客様。
あなたは、どのお客様層を獲得したいですか?答えは決まっていますよね。営業をしている方であれば、最終的には、全てのお客様をファンにしたいと思うのではないでしょうか。
■潜在客をファン客化
HIS
に入って1年目、私は小さな営業所を任せていただきました。当時の私は、旅行の事は、少しは勉強していたものの、先輩社員に比べて圧倒的に足りなかったの
が海外への渡航経験でした。当時のHISは、"旅人"から社員になった人が多く、4、50カ国の渡航経験があるのが当たり前。そんな中にあって私は、入社
直後の社員旅行で連れて行ってもらった香港だけというあり様。先輩の所長さんたちは、実体験をもとにした「中国自由旅行説明会」とか「インド説明会」、
「ヨーロッパ鉄道の旅」などを開催してファンをつくっていました。私が真似したくても経験がないものですから、話のネタがありません。
そ
んな中で考えだしたのが、「この人に紀行!」("紀行"と"聞こう"をかけたネーミング)というお客様をスピーカーとした旅行イベントでした。当時の
HISを利用なさっていたお客様は、ミシシッピ河をカヌーで下ったり、ニュージーランドをバイクで一周したり、ご夫婦で1年間かけて世界一周したりと、マ
ニアックな個人旅行をなさる方々が大変の多く、私もお客様がお帰国なさって、旅のお話を伺うのが大変楽しみでした。
また当時は、若い人た
ちの中に海外を自由に旅行したいという思いを持っているものの、「どうしたら良いかわからない」、「不安だ」という方たちも少なくない状況でした。私が思
いついたのは、経験豊富なお客様の旅の経験を潜在的なお客様層に聞いていただくことによって、自社のお客様になっていただくことでした。しかも、お金をか
けずにすぐに出来る方法で。
まず大学に「自由旅行の無料説明会 ―この人に紀行」というタイトルのビラを配って人を募ります。営業時間終
了後、お菓子と飲み物を用意し営業所にあるだけの椅子を並べて会場づくりをし、ほとんどお金をかけず開始しました。そんな手づくりの会でも、毎回10名か
ら20名の旅行に興味がある人たちが集まってくれて、私が所長を務めている1年足らずの間に24回も開催できました。
■押し売りしない
そ
のイベントでは、HISの宣伝は一切行わないことをスタッフ達と申し合わせていました。「売りつけられるのではないか」という強迫観念があると、お客様は
離れていってしまうものです。私たちは、ひたすらイベントを面白くすることだけに力を入れました。すると、会に参加され経験者の話を聞いた旅行経験のない
お客様が「今度○○へ行こうと思うのですが?」とご相談に再来社いただくケースが大変多くなりました。そして、その方が旅行後、スピーカーとして「北米映
画紀行」などと名付けてお話なさるようになると、旅行や映画に興味があるご友人も連れてきていただけるというような好循環が生まれてきました。
大
手旅行代理店が"○○ツアー説明会"などと題して募集広告を出し、ホテルなどの会場をかりて集客をはかろうとしていたのとは、まったく逆の方法で臨んだの
ですが、そのことがかえって良かったのかもしれません。「この人に紀行」では、私達が人集めをせずとも、スピーカーと参加者の方々が「生の旅の話が聞ける
楽しいイベントがあるよ」、「旅行を押し売りされたりする心配もないので安心して参加できるよ」などといってご友人を誘っていただけました。また、結果的
にイベントではセールスを一切せずとも、ほとんどの参加者の方々が「旅行にいくならHISの只松さんの営業所で」というように、旅行前からファンになって
いただけるありがたい状況が生まれたのです。まさにお客様がお客様を呼び、そしてそのお客様がまた、新たなお客様を呼ぶ状況となったと言えます。
■楽しむことが大事
こ
のようにささやかではありますが、自身としては手ごたえがある成功経験をした私は、数年後営業本部のスーパーバイザーとして23店舗の営業所をみるように
なった際、それぞれの営業所でこの種のイベントを開催するよう促してみました。しかし、なかなかうまく出来る営業所がありません。それはなぜか? 所長と
してのレベルは、皆のほうが当時の私よりも上だったと思います。また、所長としての使命感も持った人たちであったのですが、なぜか上手くいきません。
よ
く考えると、ひとつ違っていたことがありました。それは、「楽しむこと」。元来、サービス精神旺盛で楽しいことが大好きな私は、スタッフも巻き込んで、み
んなで楽しもうという空気をつくることそれ自体を楽しんでこの会を運営していました。お陰で、最初は少し消極的であったスタッフもどんどん積極的になって
「今度の会は、営業所を飛び出して海の家でレクレーションも兼ねて開催しましょう」とか、「参加者の皆さんをまとめて温泉旅行にいきましょう」、「次は、
湯布院で開催して乗馬も楽しみましょう」などと提案し、そのアイデアを実現してくれました。楽しむ姿勢がなければ、いかに真面目にやってもお客様にワクワ
ク感が伝わらないものだと、その時に実感しました。
営業は、楽な仕事ではありませんが、心底営業を楽しむことが重要なファクターであると思います。
■信頼関係を築く
こ
のイベントに参加いただいた方々とは、20年を経ても懇意にさせていただいており、旅行業界を離れた今でもご旅行のご相談を多数いただいております。営業
の仕事は究極の信頼関係づくり。つまり一生懸命営業をし、お客様と信頼関係を築くことは、皆さんの人生そのものをより豊かなものにすると考えます。
今
回は、経験・お金・施設などがなくとも必ず、お客様をあなたの会社のファンにする方法はあるということを知っていただきたく私のささやかな経験を紹介させ
ていただきました。営業マンの皆さんが多くのファンをつくられることを心よりお祈りいたします。そのためには、いきなり完璧を求めず、出来ることから楽し
みながらはじめてみることが大事であると思います。
只松 崇 プロフィール
只松 崇 (ただまつ たかし)
ビッグ・フィールド・マネージメント株式会社 取締役プロデューサー
財団法人 生涯学習開発財団 認定プロフェッショナルコーチ


