大野尚の沸騰コラム

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「ハウステンボスの奇跡の軌跡」

「ハウステンボスの奇跡の軌跡」    2018年12月号

 

「HTB(佐世保市の大型テーマパーク 以下、HTB)に中国企業出資へ」の

記事が西日本新聞朝刊一面トップに掲載されていました。

 

 内容は、『中国の投資会社複星集団から最大25%の出資を受け入れる方針を固めた。

HTBの親会社でHISは51%を維持する見通し』と言うものです。

 

澤田社長の記者会見記事から抜粋すると、

複星集団は中国からの「年20万人総客しますよ。」

との提案を受けている。

 

HTBは直近9月期の入場者数は272万人で、前期より6%の減少となっている。

集客も伸び悩みの傾向にあり、インバンドが増えれば成長に寄与する事になる。

 

不思議な事にHISの12月3日付のIR発表では、

『中国企業から出資を受け入れる旨の報道がありましたが、これは当社およびHTBが

発表したのものではなく、成長戦略の一つとして検討を進めているに過ぎない。』

と掲載されています。

 

しかし、澤田さんの事だから、現況を鑑み将来への成長へのプラス要素としての

判断もあったうえでの交渉をされているのでしょう。

 

 

ハウステンボスの歴史

さて、ハウステンボスの歴史を辿ると、1992年に投資額2200億を

注ぎ込んで開業しています。

 

面積はディズニーランドとシーを合わせた面積の1.6倍の広大なスペースに

オランダ以上のオランダを造り上げたのです。

 

ご存知の様に、ディズニーリゾートは首都圏の3000万人というマーケットを抱えています。

HTBは同距離範囲内の長崎市と佐世保市を合わせても100万人です。

 

・周辺マーケットに人がいない

・尚且つ、交通の利便性が悪く、大村空港から1時間

・福岡からは高速を使っても2時間

 

とアクセスに問題があり、売りである運河も含めての維持管理コストが割高になる。

 

更にご存知の様に長崎県は雨が多く、テーマ―パークを運営するには

様々な負の要素は満載です。

 

2003年に経営破綻。

 

その後、ファンド会社が経営を引き継ぎ、多くのプロ経営者が再生に努力しましたが、

一度も黒字を達成する事が出来ず、遂に2009年にファンド会社が撤退を決めて、

翌年、2010年にHISの澤田さんが自ら社長になって支援を引き受けました。

 

その翌年、2011年に通期営業黒字を達成しました。

 

 

ハウステンボス再生の軌跡

以前、澤田さんとハウステンボスで講演を行った事があります。

前日にお伺いをして直接、テーマパーク内を案内してもらいました。

 

その時の話です。

 

大野   「しかし、最初に話があった時、これだけ負の要素があるにも関わらず、

      よく引き受けましたね。」

澤田社長 「朝長佐世保市長に3度も頼まれたし、誰もが反対するから、

      これは逆に面白いと思ったんだ。」

 

・・・澤田さんは、昔から自分は天邪鬼だといつも言っていました。

誰もやらないならやってみようと言う気持ちが動いての事だと思います。

 

大野   「一番難しい点はなんでしたか?」

澤田社長 「難しいから挑戦し甲斐があると思ってね。色々と隙間を探していったんだ。」

     「大野君、何だと思う?」

 

大野   「出来ていない事は全てですね。その中でも優先すべきは

      ”時間の隙間”ではありませんか?」

澤田社長 「そうなんだ、お客さんが夕食とったら、帰っていくから

      なんでと社員へ聞くと、『もう終わりです(閉園時間です)』と社員が答える。

      そこで、お客さんも夕食後は運河沿いを散歩したい人もいるだろう。

      お茶でも飲みたい人はいるだろう? なぜ、自分たちの都合で営業時間を決めるの?

      お客様ベースで時間を考え見よう。」

 

・・・そこで、澤田社長は週末や祝祭日の前日、夏休みやクリスマス、大晦日等、お客様が

ゆっくり楽しめる時期は営業時間を大幅に見直しました。

 

澤田社長 「そうだ、エンターテイメントの充実も必要だ。海外から踊りや音楽の

      ミュージシャンを招いて演奏してもらおう。」

HTB社員 「無理です。アメリカやイギリスから招くとギャラが高くて予算が足りません。」

澤田社長 「君たちは、なぜ出来る方法を考えないの?予算が合わなければ予算が合う方法を

      考えてみようよ。」

 

・・・そこで、澤田社長は日本と比較して物価が安いポーランドやチェコ、アルゼンチン

などのミュージシャンなどを招聘して、食事後の楽しい「ひと時」を創りだしたのです。

 

もちろん、その他にも冬には花が咲き乱れないから、光の花を咲かせるためにLEDを使った

光のイルミネーションやプロジェクションマッピングなどです、

 

⇒ ビジネスは、お金を払って頂ける方の期待値を膨らませて満足度を高めなければなりません。

 

更に、澤田社長は自ら自転車で館内を回りながら、スタッフ一人一人に声を掛けていきました。

 

『明るく元気に笑顔を出そう!ゴミが落ちてるよ!』

 

 

・・・一度も黒字になったことがない負け癖の付いたスタッフに将来の展望を話す。

頑張れば必ず実現出来る夢を語る。

そして、世界一になったら世界一の給料を払うと・・・澤田さんの得意技です。

昔の僕も澤田さんの未来構想にワクワクして世界一の給料にも期待していました。

 

 

澤田社長 「彼らに色々提案するとね。直ぐ出来ません。お金がかかります。時間がかかります。

      とね、最初は否定から入るんだ。」

 

澤田社長 「子供たちに喜んで貰うために、世界一の巨大迷路を造ろう」

HTB社員 「無理です。予算が合いません。木材やRCで造ると時間もお金も足りません。」

 

・・・そこで、澤田さんは段ボールで造る事を提案しました。

これなら予算に合うし、安全だし。

但し、「大きさは世界一じゃなきゃ駄目だ」

 

 

3つの1(ワン)

・・・3つの1(ワン)の強さを説いたのです。

誰も世界1や日本1を知っていても2番、3番は知られていません。

だからこそ、一番じゃなきゃダメだと説いたのです。

 

現在、HTBのHPを拝見すると、数々のエンターテイメントやアトラクションの紹介文の

最初に世界一や日本一の言葉が付きます。

お客様は一番に弱い。

出来る一番を創造して始めれば良いのです。

 

 

世界で一番清掃が行き届いている。日本で一番笑顔が素晴らしい。

なんでも良いのです。

 

 

3つの1(ワン)とは、

 

・オンリーワン

・ナンバーワン

・ファーストワン

 

あなたが出来る1(ワン)を見つけて実行することが重要です。

 

澤田さんは頭の中で未来の姿を具体的にイメージしていました。

 

自らがワクワクする、それがどんなに難しい事でも昔も今も挑戦する気持ちと姿勢は変わりません。

直ぐにやれば直ぐに答えが出る。

 

上手くいくか?行かないか?を考える時間よりも直ぐにやればその答えは直ぐに出る、

 

今回の中国資本の出資検討も未来のワクワクを更に広げる為の事だと信じています。